めがねの雅
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めがねの雅
業界コラム
vol.012
【もったいない】
[2010/2]

 小さい頃は、おもちゃにしろ洋服にしろよく物を大事にしなさいと怒られた。みなさんもそんな経験はないですか?とりわけうちのお袋は物持ちがいい。ふと気が付くと幼稚園(35年程前)の頃に見たことがある物もいまだに使っていたりします。本当に頭が下がります。と同時に昔の物はちゃんと大事に使えば長持ちするのがよく分かります。今は、大量生産大量消費の時代を経て、エコロジーブームのまっただ中、しかも、多くの業界が価格戦争に入り薄利多売の真っ最中、眼鏡業界も例外ではありませんが…。消費者にとってはいいことばかりのようにも聞こえます。

 しかし、必要ないものまで安いからと買うのはお金をドブに捨てるようなもの、やはり、買う前にはよく考えてから買うことにしています。また、買う物にもよりますが…いくら安くてもすぐに使い物にならなくなるなら、ちゃんとした物をちゃんとした値段で買って長く大事に使うほうがいいような気がします。

 メガネの購買動機の理由として上位にいつも上がってくるのは、『見にくくなった』『レンズにキズがはいった』『フレームが壊れた』などである。

 『見にくくなった』場合は、もちろん眼のほうが変化しレンズの度数が合わなくなってしまっているので、今の自分に合わせてレンズを入れ替えるか、フレームも新しくして一式で買うことになります。

 『レンズにキズがはいった』場合は、レンズを再研磨してコーティングをほどこしてなんてことはレンズメーカーさんはしないので、レンズの度数を再調整、もしくは同じ強さでレンズを入れ替えることになります。フレームも傷んでしまっている場合や、新しくしたい場合はフレームも新しくして一式で買うことになります。

 さて、『フレームが壊れた』場合、実はこの場合が一番困ります。まず、見え方やレンズの度数に問題がなければ、壊れたフレームを修理するか部品を交換すればいいのですが、そこは、新型をバンバンだしてきて売り切って終わりになってきている業界ですから、一年前の商品の部品がないことなんて当たり前になってきています。しかも、修理に出せば2〜3週間もかかるため1本しか使えるメガネがない場合は修理に出せません。『見え方に問題ないんだからレンズを使って他のフレームに入れればいいじゃん』と聞こえてきそうですが、そんなに簡単ではないんですよ。

 右目と左目の間隔は人それぞれ違います。当然、その人に合わせてメガネを作るわけですからレンズの中心と眼の中心を合わせてメガネは作られています。レンズを使用して他のフレームに入れる場合はレンズの大きさ、形、右と左のレンズの間隔が違うので、入れ替えできるフレームに制限があるのと、ほとんどの場合レンズの中心の距離は大なり小なりずれます。中心がずれるということは、見たときに大なり小なり違和感が出るということです。ご説明しても、『レンズがもったいないから…』とよく聞きますが、それで、レンズの中心がずれて違和感が大きくなるとかえって使いにくい、疲れやすいメガネになってしまいます。そこは、『ずれないように作るのがメガネ屋さんの仕事でしょう』と言われそうですが、物理的に無理な場合は無理なのです。

 『もったいない』という気持ちは大事ですが、メガネに関してはフレーム替えはあまりおすすめできません。自分の視覚を補ってくれる見るための道具ですから、よく話しを聞いて考えてからフレームを替えるのか、修理をするのか、新しくメガネを作るのか決めましょう。


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